小噺・書簡四方山

「土方さん、そろそろ今年も仕舞いですねぇ」
「あァ、どうも、正月ってぇ気分にゃほど遠いがな」
「そりゃあ、あんた、身の回りが片付いてねぇからじゃあねぇんですかい」
「やかましいわ! ……俺は忙しいんだ。総司、おめぇ暇そうにしてるんなら、ちったぁ手伝ったらどうでい」
「そう云って、いっつも俺に用事云いつけるんですからねぇ」
「俺の部屋でごろごろしてる、おめぇが悪ィ」
「いやァ、俺の部屋でごろごろしてると、源さんが起こしにくるんで」
「おめぇが、仕事ふけって寝てるからじゃねぇか!」
「いや、それはまぁ。……そうそう、よく云いつけると云やぁ、あんた、よく俺やら山崎さんやらに、手紙書けって云いましたよねぇ。勝さん宛の手紙もそうですけど。俺になんか、賀状まで書かしたじゃねぇですかい」
「……(いらんこたァ、よく憶えてやがるな)……まァあれァ、忙しい時期だったからなァ」
「嘘でしょ。自分の手(筆跡)が拙いって思ってるから、俺やら山崎さんやらに書かせてたくせに。大体、そもそも手紙書くこと自体が嫌いじゃあないですか、あんた」
「……おめぇが俺の手を、“女みたいな、くねくねした手”なんぞと抜かしやがるからじゃあねぇか!」
「だって、本当のことでしょう。何だって、筆をそう斜めに持って、穂先でへなへなと書きやがるんでさァ? そんなんだから、細っこい、女みてぇな手になるんじゃあねぇですかい」
「……五月蠅ぇよ」
「男なら、こう! 近藤さんみてぇに、まっすぐ持って、筆の根元まで使って、ぐうぅと書きゃあ、腰の据わった手になるじゃあありませんかよ」
「五月蠅ぇって云ってるじゃねぇか、このすっとこどっこい! 俺が筆をどう持って、どんな字ぃ書こうが、俺の勝手だ!」
「じゃあ、俺たちに代書なんぞさせなきゃあいいじゃねぇですかい」
「……俺の手ァ、読みづらいってぇ評判なんだよ(自棄)。こないだなんぞ、新入りに、記名が読めねぇと云われちまったからな!!」
「そりゃあ、綴り方の問題でしょうが。……大丈夫、俺にゃあ、きちんと読めますから」
「……おめぇにだけ読めてどうすんだよ……」
「近藤さんも、山南さんも、源さんも、原田さん永倉さん平ちゃんに斉藤さんも、山崎さんも島田さんも読めてますから!」
「……(凹)……」
「……て云うか、土方さん」
「……あァ?」
「もう大晦日じゃあねぇですかい。あんた、そこにある真っ白な賀状、どうするつもりなんで?」
「…………総司、暇そうなおめぇが書け」
「結局ァそれなんですかよ……」


† † † † †


阿呆話in???
いや、何かもう、鬼の筆跡がくねくねしてると評判なので&真剣に年賀状が真っ白なので!(泣) +今年最後の更新が『闇路』ってのは、流石にどうよと思ったので、なのですが……どんなもんでしょうかねぇ、ふふふふふ……


鬼の筆跡ですが、一応、当時の勤皇志士連中の我流よりは、かたがあって“きれい”らしいです――が、何か半端な筆跡と書いてあった……(泣) はいはい、どうせそうでしょうとも……(凹)
とか、へこむ自分がわからねぇ……


ま、取り急ぎですが、こんなもんで。
皆様、どうぞ良いお年を。
来年一発目は……鉄ちゃんの話かな、やっぱ……