2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

北辺の星辰 10

四月二十九日、会津若松に入った歳三たち一行は、城下の清水屋という宿に投宿することになった。 と云うのは、この宿には、幕府御典医であり、かねてより新撰組とも懇意である松本良順が、江戸を抜けて投宿しているということであったからだ。 宿に落ち着い…

偶には。

ここのところ、新撰組がらみの本(小説、漫画など)をいろいろ買ったので、これまでに手に入れたもの全般の感想など書いてみる。前にちょこちょこ書いてた感想の総まとめ的な。 まぁ、主観ばりばり+ネタバレありですので、お厭な方はスルーでどうぞ。 今回は…

めぐり逢いて 17

松前攻略軍は、城下で暫休陣していたが、兵の疲れがややとれたと見たところ――十一月十日になって、衝鋒隊、額兵隊を先鋒として松前城を出立し、江差を目指して行軍を開始した。 同じころ、五稜郭からも一聯隊が、松岡四郎次郎を隊長として江差を目指していた…

小噺・大鳥圭介の儀

「そう云や、土方さん」 「何でェ」 「こないだ俺、大鳥さんに会いましたぜ」 「……ちょっと待て」 「何ですよ?」 「何でおめェに、大鳥さんがわかるってェんだ。おめェ、会ったことなかったろう」 「や、俺ァ知らなかったんですがね、一緒だった島田さんが…

北辺の星辰 9

負傷した歳三は、宇都宮敗走の翌日昼、島田魁などわずかな人数とともに今市を発った。やはり負傷した秋月登之助も、幾人かの伝習隊士とともに同道した。 二十六日には、会津領内の田島へ入る。ここは、秋月の父親が代官を務める陣屋があり、かれを実家で養生…

めぐり逢いて 16

十一月一日夜、知内に宿陣中の松前攻略軍を、松前藩兵が襲撃してきた。 鉄之助たちはまだ知らなかったのだが、それは、蟠龍が松前城を砲撃したことへの報復であったのだ。 松前藩兵たちは、民家に火を放ち、こちらの姿を認めるや、銃を撃ってきたが、これに…

小噺・野村利三郎の儀

「土方さん、こないだ野村さんに会いましたぜ」 「野村? 野村ってなァ、野村利三郎か?」 「そうでさァ。相変わらずうるさくしてやがるんで、ちょっと撫でてやりましたぜ(爽笑)」 「“撫でて”って、おめェ……」 「斬りつけたりァしませんでしたよ。ただちょっ…

北辺の星辰 8

勢いに乗る“官軍”は、翌二十三日、早速攻勢に転じる。 戦いは朝の九時ごろ、壬生街道から宇都宮城へと続く六道ノ辻ではじまった。 野津道貴・大山巌率いる薩摩藩の一軍が、六道口の陣に来襲、猛攻の末にこれを陥落させた。 さらに薩摩藩兵たちは、城下を抜け…

土方歳三と云う男。

考察と云っても、いろいろ今さらなんですけども――今、“明治維新をひっくり返せ!”脳外シュミレーション(まァ、他人の脳内でシュミレーションやってると云うか……どうやら、完全にはひっくり返らないっぽいのですが)中なので、それ絡みで思ったことなど。 どう…

めぐり逢いて 15

五稜郭入城の翌日、十月二十八日に、副長は、彰義隊、額兵隊、陸軍隊など五百人あまりを率い、松前攻略に向けて出陣することになった。 もちろん、出陣するのは副長のみではない。松前攻略軍の総督となった副長を守るため、島田や蟻通など古参のものが数名、…

小噺・斉藤一の儀 その弐

「で、土方さん、こないだの続きなんですけどね」 「どれの続きだよ」 「ほら、不動堂の屯所で、一ちゃんに戸棚に詰められそうになった話でさァ」 「あァ、あれか」 「えェ、あれですけど、あれ、続きがあってですね、俺と一ちゃんがもみ合ってるとこに、平…

小噺・斉藤一の儀

「そう云や、土方さん」 「何でェ」 「こないだ、一ちゃんに会いましたよ。源さんとこで、偶然なんですけど」 「あァ、懐かしいなァ。あいつ、元気だったか」 「相変わらずでしたよ、特に、あの顎が。思わず掴んだら、鼻ァ潰し返されましたさァ」 「……おめェ…