2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小噺・勝海舟の儀

「土方さん」 「何でェ」 「あんたァ、勝さんのこと、“いつもにこにこしてた”って云ってましたけど、それァどっから出た話なんで?」 「……どっからも何も、俺が見た勝さんァ、いっつもにこにこしてたんだがな?」 「……俺の見たなァ、地獄の閻魔みてェな面と…

北辺の星辰 4

勝によって与えられた、歳三たちの潜伏先は、丸ノ内の酒井屋敷であった。元は、若年寄を務めていた敦賀鞠山藩の前藩主の役邸跡である。新撰組の江戸での屯所であった元秋月邸とは、大名小路を挟んで斜め前の位置にあり、土地勘も比較的働きやすい立地であっ…

めぐり逢いて 11

新撰組本隊が仙台に到着したのは、九月十六日の昼過ぎのことだった。 「安富さん、島田さん……」 追いついてきた京以来の副長の腹心たちに、鉄之助は昏いまなざしを向けた。 「市村君、副長は」 安富才助に、細い目を向けられて、鉄之助は力なくうなだれるし…

小噺・守衛新撰組

「土方さん、ちょっと訊きたいんですけどね」 「何でェ」 「“守衛新撰組”ってェな、何のことですよ?」 「……何だそれァ」 「俺の方が訊いてるんですけど。――何か、箱館戦争ん時にあったみてェで、島田さんが隊長だとか……」 「そんな名前の隊は、知らねェなァ…

北辺の星辰 3

近藤が薩長に捕らわれた翌日の四月四日、歳三は、隊士たち七名と密かに江戸へ舞い戻り、勝海舟のもとを訪れた。 勝は、幕府軍事取扱、云わば軍事方の最高責任者であり、現在は、将軍慶喜の命を受け、薩長方の責任者である西郷隆盛と、徳川家の扱いをめぐって…

めぐり逢いて 10

九月一日、副長は仙台に到着した。 到着早々、幕府海軍の榎本釜次郎のもとに赴いた副長は、何やら今後の動静について会合を持ったようだった。 三日には、副長たちは、仙台・青葉城に登城し、瓦解寸前の欧州列藩同盟を立て直すための会議に出席した。 その間…

小噺・剣術談義

「そう云やァ、土方さん」 「何でェ」 「思い出したんですけど、何で俺、ずっとあんたに勝てなかったんでしょうねェ。俺ァ免許皆伝で、あんたァ目録だったってェのに」 「我流でも、俺の方が強ェってェことだろ」 「や、あんたの我流が並みじゃねェってのは…

北辺の星辰 2

近藤勇と云う男は、下り坂には滅法弱い。 もともと低いところに居る分には、それを嘆いて後ろ向きになることなどなかったのに、上へ上がってしまうと、もう下にいた時のことがわからなくなる。下にいる人間の心にも疎くなる。 かつての歳三には、近藤のそう…

北辺の星辰 1

「今、何て云った!」 土方歳三は、目を剥いて叫んだ。 「……俺は切腹する」 近藤勇は、低い声で云った。 「何を云い出しやがる!」 また叫んでから、歳三は、隊士たちの耳目を慮って、声を落とした。 「……馬鹿なことを云うな、それでは無駄死にだ」 「だが、…

偶には資料のこと。

……と云っても、あんま資料使ってないんですが。今回は買わないって決めたから。 とりあえず、タイトル、著者名、出版社名、ISBN(面倒なので10桁の方)の順で。 「新選組全史」幕末・京都編 (中村彰彦 角川文庫 な 26-11) 4041906113 「新選組全史」戊辰・箱館…

新興宗教・土方歳三。

……最近、考えても仕方のないことを考えるのが自分的流行なので(つーか、鬼に関して考えること自体が、まぁそんなもんだからな)、またうだうだと考えてみる。 下の項でちらっと書いた、箱館新撰組は新興宗教、について。 いや、こう書くと不快に感じられる人…

めぐり逢いて 9

七月朔日、副長は戦線に復帰した。 とは云え、新撰組本隊は、白河口での戦いに赴いており、実際には、副長が出向いて、本隊に合流したと云うことだったのだが。 そして八月二十二日、勝敗は、会津の境、母成峠で決する。 守るは、大鳥圭介率いる伝習隊、猪苗…