小噺・閑話休題

「……おう」
「あれ、源さん」
「ああ、ちょうどいいところに。一緒に飲みましょうよ。土方さんが、舶来の酒を持ってきてくれたんでさァ」
「舶来?」
「そうですよ。ほら、ヴィーネとやら云う、葡萄の酒だそうですよ」
箱館でな、フランスの士官どもが飲んでたんで、試してみたらこれがいけてな。ほら、これで飲むんだぜ」
「……ぎやまんの杯か」
「こっちの銚子もぎやまんでさァ。ささ、まずは一献」
「……渋いな」
「これがいいんじゃねェかよ、源さァん(ばしばし)」
「……総司」
「はい?」
「こいつ、いってぇ何杯飲んだ」
「見ちゃいませんよォ、土方さんだって、大概いい大人ですし。自分のこたァ、自分でできるでしょう」
「……だがおめぇ、こいつ、弱ぇだろうが」
「でも、他に誰がいるわけでもありませんし、他人様に迷惑はかからないでしょう」
「……俺がいるから、おめぇにはな」
「うははははは」
「ほれ、歳!(ばしん)」
「うぉ!(跳ね上がる)」
「わぁ、子供みたいですねェ、土方さんてば。……源さん、そう云や、土方さん、こんなもんまで買ってきたんですぜ」
「……何だ、それぁ」
「ちょこれぇととやらでさァ。舶来の菓子だそうですよ。まァまァ、ひとつ」
「……む、これぁ――」
「美味いでしょう」
「変わった菓子だな。中のこれぁ何だ?」
「何でも、珍皮を砂糖で煮たのに、ちょこれぇととやらをかけたもんだそうで。これを肴にヴィーネを飲むのが、またいけるんでさァ」
「……まぁ、面白ぇ取り合わせだな」
「源さん源さん、これこれ」
「うわ、また土方さんてば、沢庵ですかい?」
いぶりがっこ、ってェんだよ。何か、北の方の漬物らしくってな――な、食わねェか」
「……貰う」
「俺にゃァ、それで酒呑もうってェあんたたちの気が知れねェや」
「いいじゃねェかよ、別に。……なァ、源さん、どうだ、美味ェか?」
「……ああ」
「だろ! 俺、絶対源さんが気に入ると思ったんだ!(満面の笑み)」
「ちょっと、俺のこと無視ですかよ?」
「煩ェな、いいじゃねェかよ、偶には」
「偶に! 偶に、ねェ……」
「何だよ、何が云いてェんだ」
「いやァ、別にィ?」
「この野郎!」
「歳! 総司も! ほれ、止めれ!」
「……だって、源さん、総司の野郎が……(うるり)」
「土方さんがいけないんですよ、俺を省こうってェんだから」
「わかったから! ほれ、歳、おめぇは飲み過ぎだ。もう寝れ」
「う〜ん、源さ〜ん(纏わりつく)」
「ああもう、しょうもねぇ野郎だな。ほれ、起きてあっち行くぞ!」
「うひひひひ」
「ほれ、しゃんとしろ、しゃんと!」
「……いいなァ。――そうだ、俺も……源さーん♥(のしっ)」
「うおっ!? ……総司、重ぇぞ!」
「えぇ〜? 俺、酔っ払っちゃってェ♥」
「馬鹿云ってねぇで、おめぇも寝れ。そのでっけぇ図体でのしかかられちゃあ、俺の腰がわるくならぁ」
「えぇえ、そんな、酷いなぁ」
「いいから寝れってぇの」
「はいはい――じゃあ、源さんも一緒に寝ましょうね(がっしり)」
「うひひ、俺も〜」
「……でけぇなりして、おめぇらはまったく……(溜息)」


† † † † †


阿呆話in地獄の?丁目。


源さん、お初です。つーか、このシリーズに源さんを出すことになろうとは……
まぁ、一遍書いてみたかったので、まぁいいか。なんとなく流れが微妙だが……まぁ、気が向いたら撫でつけますさァ。


ところで、源さんの科白って、鬼の喋りと似てるんですが、明確に違うところもあり――この“寝れ”ってぇの、ホントはどこの方言なんだろう……いや、何となく使ってる(私も沖田番も)のですが、居住区域近隣の方言でもないような……日野方言だったらわかんないけどね!(爆) 私どもの出身(?)地は、北陸と東北で離れているのですが、そう云えば“寝れ”だけは共通で使ってるなぁ……周囲は使わないけど。おおお?
……まぁいいや。


えーと、次はミケ話(断章)か、鉄ちゃんの話で。