小噺・輪廻転生

「そう云や、土方さん」
「何でェ」
「あんた前に、自分は織田の殿様の生まれ変わりだとか云ってましたよねェ」
「あァ、そう云やァ云ったっけなァ」
「あん時も訊きましたけど、何で伊達の殿様じゃあいけねェんですよ? 伊達の殿様の方が、鎧兜がかっこいいじゃあねェですかい」
「だってなァ、総司、伊達の殿様ってなァ、目っかちじゃねェかよ。俺ァ、両目とも開いてるからなァ」
「でも、確か、あれァ疱瘡にかかって片目が駄目んなったってェんでしょう。生まれつきじゃあねェじゃねェですかい」
「それでも、俺ァ目明きだぜ(頑強)」
「……まァ、何でもいいんですけどね。――じゃあ、あんたが織田の殿様なら、俺ァ聖徳太子ってェことで」
「何でだよ」
「とりあえず、あんたより偉い人ってことで」
「わけがわからねェ……おめェは、俺より偉きゃあ何でもいいのかよ」
「えェ、まァ(あっさり)。あ、俺、あれでもいいですよ、孫悟空!」
「……西遊記のか」
「ええ!」
「……おめェが云うと、俺ァ、例の『×ラゴン×ール』とやらのあれを思い出さずにゃあいられねェんだが……」
「“おッス、オラ悟空!”ってェんですかい?」
「それだそれ。あれァ、すこしおめェに似たところがあるよな」
「ひでェこと云いますねェ、あんたァ」
「おめェに云われるのァ心外だぜ」
「……いいじゃねェですかい、伊達の殿様で。すくなくとも、明智に裏切られたりはしねェんですし」
「……て云うか、おめェ、単にあの弦月の前立てが好きなだけなんだろう?」
「や、それだけってェわけでもねェんですけどね」
「(それもあるってェんだろ)――じゃあ、まァ、俺が伊達の殿様の生まれ変わりだったとしてだ、おめェはそれなら誰なんだよ?」
「俺ァやっぱり成実公で! 大公様や神君・家康公に望まれた武将ですぜ、格好いいじゃねェですかい!」
「おめェが成実公なら、誰が片倉小十郎だよ?」
「それァ源さんに決まってるでしょう」
「……確かにな」
「源さん、あんたのせいで、嫁も取らずにいたじゃねェですかい。」
「俺のせいじゃねェ、かっちゃんと俺と、おめェのせいでもあるんだぜ、総司?」
「え、あれ、そうなんですかい?」
「……源さんが聞いたら、深ァい溜息つくだろうなァ……」
「まァまァ、いいじゃねェですかい。で、姐さんが愛姫さまと。――似てるじゃあねェですかい、伊達の殿様も色好みだったそうですし、あんたも花街で浮名流してるし」
「……俺ァ、衆道はやってねェぞ」
「そんなのァ、時代の問題でしょうさァ」
「時代が違おうが何だろうが、性癖なんぞァそうそう変わるもんかよ」
「そうですかねェ? でも、そもそもあんたァ、すこし“まぞ”っぽいところが……」
「!!!!!(驚天動地) わあぁぁァ!!! 何抜かしやがる!!!!!」
「いやァ、ほんとの話をしただけですけども?」
「総司!!!(怒)」
「やだなァ、人間、図星さされると怒り出すんだから」
「出鱈目云ってんじゃねェってェんだよ!!!」
「ほんとのことなのに……(指咥え)」
「まだ云いやがるか!!!!!」
「わァ、怖いこわァい〜♪(脱兎)」
「総司、てめェ!! ……畜生、帰ってきたら、おぼえてやがれ……(怒)」


† † † † †


阿呆話at地獄の四丁目。例の、信長の生まれ変わり云々ってアレ。
つーか、何故にド×ゴンボー×……(って、インターネット出しといて云う科白でもないか……)


このネタ持ってきたのは、今戦国BA/SA/RA/2やってるせいです。とりあえず、殿で天下統一しましたぜ。
伊達の殿は、織田の殿によく比較されてましたよねェ。やっぱどっか似てたのかなァ。ハンサムだったし(実は、かつて伊達の殿にハマったのは、あの顔に惚れたからなんですが――復顔像が超↑好みだったの……性格はアレなんですが/苦笑)、派手好きだったし、すげェパフォーマーだったし(死装束とか、例の金箔張りの十字架とか)。
しかし、沖田番曰く、殿が織田の殿と違っているのは、愛嬌があるところ、だそうで。信長公みたいに過激なひとは、大体部下に裏切られて死ぬんだそうで、そう考えると、異常に結束してたと云う伊達一門、結構違ってますよねェ。
まァ、伊達の殿は、かなりやりたい放題やってた(小田原遅参の話とか、秀次君の話とか、鶺鴒の目の話とか、忠輝君の話とか)わりには、ちゃんと人生全うしたもんなァ。酒のトラブルも多かった(“蒲生殿に詫びの品参らせ……”って手紙が残ってたりとか……)のはご愛嬌、なのか?


源さん=小十郎はもうデフォルト(小十郎、小言オヤジですが)として、実は成実は他のひとだろうと思ってます、個人的に。
総司は――わかんないけども、沖田番は間違いなく猫御前(笑)。だが、本人は成実が好きなんだそうだ――そうかい。でも猫だから(にやり)。
おようさん=愛姫で、殿は三つ指はつかないけど、愛姫の“にっこり”にびくっとするといい。
小十郎にはべたべたと甘えたりはできなかった(や、小言云うでしょう、「私は、殿をそのような人間にお育てした覚えはございませぬが」とか何とか)と思うので、うん、源さんの方がいいかなァ。もちろん小十郎も大好きですが。
あ、伊達の殿がヘタレで甘ったれなのは、別に私の創作ではなく、厳然たる事実ですよー。『伊達政宗の手紙』(佐藤憲一 新潮選書 ISBN:4106004798)読むと、ちゃんとそんな殿です。↑の“蒲生殿に〜”は、『大日本古文書 家わけ第三 伊達家文書』(東京大学出版会)に載ってました。興味のある方は、そちらもどうぞ〜。 


ちなみに、鉄ちゃんの前世(『めぐり逢いて』のね)は、今回はまったく掠ってもいませんぜ。ふふふふ、さァて、鉄ちゃんの前世(+その時の鬼と総司)はどんなんでしょうね〜(笑)。


さてさて、次は鉄ちゃんの話の続きか……まだ、日野本陣のネタは使えない、かな……